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俳句には、季節を感じさせる言葉である「季語」を入れて詠むというルールがあります。

季節ごと、それこそ数多の季語があるわけですが、季語の中でも取り分け「」をテーマにしたものは、とても身近でその季節をより顕著に感じさせてくれるものです。

そこで今回は、有名な俳人たちが「花」をテーマに詠んだ俳句を、その句に込められた意味を紐解きながら幾つかご紹介してみたいと思います。

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花の俳句(1)与謝蕪村が詠んだ春の花の俳句


菜の花や 月は東に 日は西に

この俳句を詠んだのは、日本を代表する俳人・与謝蕪村です。彼は松尾芭蕉、小林一茶と並び称される俳人であり、後世の有名な俳人や作家などに、多大な影響を与えました。また俳人以外にも、画家としての側面でも知られた人物です。


そんな与謝蕪村の俳句の意味を紐解いてみます。

西の空に暮れていく日に、東の空に昇りゆく月。
そして何より、一面に広がるの菜の花畑のなんと美しいことよ。



この俳句は、与謝蕪村が六甲山地の摩耶山に訪れた際に詠んだとされています。

夕暮れ時の繊細な空の情景に、鮮やかな黄色の菜の花畑。
端的な言葉に見えて、俳句に詠まれた情景を想像してみれば、なんとも与謝蕪村らしい美しく幻想的な雰囲気を感じさせてくれる俳句ではないでしょうか。

また、この「菜の花や~」以外にも、菜の花を扱った俳句を幾つも残している与謝蕪村 。実は、与謝蕪村は、菜の花をとても好んでいたことでも有名な俳人なのです。

花の俳句(2)北原白秋が詠んだ夏の花の俳句


向日葵の ゆさりともせぬ 重たさよ

この俳句を詠んだのは、近代の日本を代表する詩人であり、童謡作家としても有名な北原白秋です。日本の小学校に通った方は、現代に至るまで必ずと言っていいほど、北原白秋の詩歌を国語の教科書で習い、音楽の時間には童謡を歌い継いできていることでしょう。


それでは、そんな北原白秋の詠んだ花の俳句の意味を紐解いてみたいと思います。

風に吹かれようと、ゆさりとも揺れない
悠然とした向日葵の姿は、とても逞しく素晴らしい



向日葵は、夏を感じさせる花の中でも、主役といえる花です。そのため、向日葵は夏の季語の中でも特に有名な季語なのです。この「向日葵の~」は、そんな向日葵の堂々たる存在感を詠んだ北原白秋の有名な俳句。

悠然と咲き誇る向日葵が、目に浮かぶように晴れた夏の暑い日を想像させ、明確な夏らしさを感じさせてくれると思いませんか。

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花の俳句(3)松尾芭蕉が詠んだ秋の花の俳句


白露も こぼさぬ萩の うねり哉

日本を代表する俳人であり、世界的にも有名な松尾芭蕉による一句です。現代に至るまで、日本人であれば、松尾芭蕉の名を知らずに大人になる人はいないと言っても過言ではない程、歴史の教科書にもしばしば登場する人物です。


そんな松尾芭蕉が詠んだ俳句の意味を、現代風に読み解いてみます。

風にそよぎ揺れながらも、
宿した白露を零さない萩の花の
なんと可憐なことか。



萩の花というのは、まるで蝶のような形をした可愛らしい花です。そして、白露というのは、元々、月の光に照らされて白く輝く露のことだったそうです。
蝶の形をしているので、花びらに乗った露など、風に揺れれば簡単に落ちてしまいそうですよね。

けれど、想像してみてください。

夜月に照らされて白く輝く露を、穏やかな秋風に吹かれた萩の花が、落とさないようにふわりふわりと揺れる。どこか、いじらしささえ感じさる、可憐な情景だと思いませんか?

花の俳句(4)高浜虚子が詠んだ冬の花の俳句


山茶花(さざんか)の 花や葉の上に 散り映えり

明治・昭和期に活躍した有名な俳人であり、後世に著名となる俳人や作家を育てた高浜虚子(たかはまきょし)による一句です。高浜虚子は本名を「高浜清」と言うのですが、「虚子」という名は、尊敬する師である正岡子規に付けて貰ったそうです。


そんな高浜虚子の俳句に込められた意味がこちら。

葉の上や地面に散った山茶花の花弁が、なんと美しいことか


よく、椿と間違えられる山茶花。旬の時期などを知らない方には、一見区別がつき難いのですが、散り方が全く違うのです。椿は、花一輪で落ちるのに対し、山茶花は一枚ずつ花弁を落として散ります。そのため、深い緑の葉の上や地面に落ちた花弁は、まるで絨毯のよう。

咲き誇る山茶花も美しいのですが、散った山茶花もまた、鮮やかで美しく、楽しませてくれるものだという意味かもしれません。

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花の俳句(5)良寛が詠んだ日本史に残る有名な花の俳句


散る桜 残る桜も 散る桜

この俳句を詠んだのは、江戸時代の僧侶・良寛(りょうかん)です。

越後国出雲崎(現在の新潟県三島郡出雲崎町)の名主の長男として生まれた良寛。しかし十八歳の時に、両親の反対を押し切って出家します。そして、格式高い円通寺の厳しい戒律を守り、生涯の師と定めた和尚の元、勤労第一という修行に励んだ事で知られている人物です。

また、良寛は俳句だけでなく、和歌や漢詩、狂歌に俗謡などの才能に秀でた人物で、更には書の達人だったそうです。そして、この「散る桜~」の俳句は、そんな良寛の詠んだ辞世の句でもあります。


それでは、その句に込められた意味を紐解いてみたいと思います。

終わりと散る桜に、未だ咲き誇る桜。
それでもいずれは、等しく散る桜となる



散るものと残るもの。違うように見えて、いずれは同じように散る。そんな桜を通し、人の一生を表しているかのような良寛の俳句です。

また、この俳句は、「いずれ死して、また共に」という意味にも表せられることからか、太平洋戦争時の特攻隊の心情に重ね合わせられるということでも有名になりました。

※参照:和歌、俳句、短歌、川柳の違いをわかりやすく解説!

この記事のまとめ


花を題材にした有名な俳句を、その意味と共に5つご紹介しました。

花の季語は、その季節を鮮明に感じさせてくれます。けれど、だからといって単純に季節や、目の前の情景だけを表しているだけではありません。

短い俳句の言葉の中に込められた意味を紐解いていくと、隠れていた深い想いや情景が浮かび上がってきます。

名を残した俳人たちの有名な俳句は、その奥深さが極められていると思いませんか。
まだまだ日本には、名句と称される多くの俳句が残されています。

言葉に込められた意味を紐解き、そんな奥深さを味わうことこそ、俳句の醍醐味なのではないでしょうか。

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