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和歌に詠まれる冬の情景は、なんとも幻想的です。


私自身、現代の風景とはまた違う自然の美しさを感じたいがため、和歌集を読んでみたりします。その度に、冬をテーマにした和歌には、誰でも一度は耳にしたことがあるような有名な和歌が多いのも特徴だと感じます。


今回は、特に有名で幻想的な冬の和歌をご紹介したいと思います。
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その1.山部赤人の雄大な自然の「冬」の和歌


田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

作者は、山部赤人です。
奈良時代の歌人で、歴代の天皇にその才能を愛され、官吏として仕えました。
「万葉集」には五十首、「勅撰集」にも四十九首の和歌が収録されている有名な歌人です。


それでは早速、百人一首にも選ばれた山部赤人の有名な冬の和歌を、現代語に直してみます。


田子の浦の海岸に出て、遠く彼方を眺めてみれば、雪をかぶった富士の山が見える。
その美しい富士の高い峰には、今も真っ白な雪が降り続けているよ



冬ならではの富士山の光景を詠った美しい和歌です。

その2.中納言家持が詠んだ幻想的な「冬」の夜の和歌


鵲(かささぎ)の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける

作者は、中納言家持こと、大伴家持(おおとものやかもち)です。
「万葉集」の編纂に関わった人物としても有名です。


大伴家持は、由緒正しい武官の家柄の出身ですが、歌人としても大変優秀だったそうです。
「万葉集」では、長短含め四百七十三首が収録され、その収録数は断トツ。
三十六歌仙の一人でもあります。


そんな中納言家持の和歌の意味がこちら。


鵲は七夕の夜、天上界にある天の川に橋を架けるという。その橋のごとく、天上の方(天皇)が住まう宮中の階段には、霜が降り積もっている。その白さを見ると、夜も更けたと感じるよ


因みにその後、宮中にある御殿と御殿をつなぐ橋や階段を、「鵲の橋」(かささぎのはし)と呼ぶようになったのだそうです。家持の和歌の影響もあるのかもしれませんね。

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その3.源宗于朝臣の侘しい「冬」の和歌


山里は 冬ぞさびしき まさりける 人目も草も かれぬと思へば

作者の源宗于朝臣は光孝天皇の孫ですが、皇族を離れて源姓を賜りました。
「古今和歌集」などに歌が収録されている優れた歌人で、三十六歌仙の一人です。


そんな源宗于朝臣の和歌の意味を、現代風に解釈してみます。

山里の冬はことさら寂しさを募らせる。
人の訪れもなくなり、草花も枯れてしまうからだろうか



山里に住んでいる源宗于朝臣が、都に住む友人に宛てて詠んだ歌だと言われています。

枯れた情景を見ながら孤独を感じて、人恋しくなっちゃったのかもしれませんね。

その4.凡河内躬恒の無垢な「冬」の和歌


心あてに 折らば折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花

作者は、凡河内躬恒(おおしこうち のみつね)です。
三十六歌仙の一人にして「古今和歌集」の撰者、あの紀貫之とも付き合いがあったそうです。


それでは、こちらの和歌の意味を現代語に直してみます。

折るならば当てずっぽうに折ってみようか。
初霜が一面に降り積もり、花なのか霜なのか見分けがつかなくなっている白菊の花を



凡河内躬恒は、現代人からすると馴染みがないかもしれませんが、当時の方々にとっては歌人として超がつく有名人でした。この「心あてに〜」の和歌も、和歌を教えていた弟子たちに詠んでみせた歌なのだそうです。

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その5.坂上是則の清々しい「冬」の夜明けの和歌


朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪

作者は、三十六歌仙の一人、坂上是則(さかのうえ これのり)です。
生年不明な人物ではありますが、坂上是則の和歌は有名なほどに残っています。

是則の和歌の腕前は「古今和歌集」の撰者に次ぐとされており、子の望城は後の「後撰和歌集」の撰者にもなっています。あと、実はメチャメチャ蹴鞠が上手だったそうで、天皇に褒められてご褒美を貰うほどだったとか。


そんな坂上是則の詠んだ和歌の意味はこちら。

静かに夜が明ける頃、外を眺めてみると、まるで有明の月が照らしているかのように、吉野の里に白い雪が降り積もっている


雪のお陰でぼんやりと明るい、冬の夜明けの情景が詠まれています。
確かに、雪が降り積もった朝は、普段とは違う雰囲気がありますよね。

※参照:月を詠んだ和歌で有名な作品を5つご紹介。

この記事のまとめ


冬をテーマにした有名な和歌を5つご紹介しました。

歌人たちの有名な和歌には、「冬」の情景が多く残されています。
寒いだけが「冬」ではないと、改めて感じさせてくれます。

歌人たちの有名な和歌を通して、「冬」独特の幻想的な空気感を味わうのも趣がありますね。